法人口座を開設する際、個人情報流出などを懸念して代表者名なしで口座開設できるかが気になる経営者の人もいるでしょう。
結論から述べると、口座名義を代表者名なしにすることはできますが、代表者の素性を隠しての口座開設は不可能です。
この記事では、法人口座を代表者名なしで開設できる銀行や、代表者名なしの場合の注意点について詳しく解説します。
法人口座の開設を考えている経営者の方々はぜひ参考にしてください。
法人の銀行口座で代表者名なし表記は可能なのか?
法人の銀行口座で代表者名なしとは、「株式会社シャチョサン」のように口座名義に代表者の名前を含まずに表記することです。
冒頭でも述べたように代表者名なしの口座を作ることはできますが、どの銀行でも代表者名なしで口座開設できるというわけではありません。
法人口座の口座名義は原則「法人名+代表者名」
法人口座の名義は以下の4つの情報が入っているのが原則です。
例として、以下の名義であれば4つの情報全てが入っている法人口座となります。
株式会社シャチョサン 代表取締役 山田太郎
このうち、法人格と法人名は法人口座を作るうえで必須なので、省略して口座開設することはできません。
代表者名・役職者名に関しては、金融機関によっては省略することが可能です。
代表者名非表示の銀行を利用すれば法人名のみ口座の開設も可能
口座名義に代表者名を載せたくない場合は、代表者名非表示で法人口座を開設できる銀行を選びましょう。
近年では、代表者変更による窓口混雑の緩和などの理由から、代表者名非表示で法人口座の開設ができる銀行も増えています。
ただし、各種書類提出時などは代表者名が必要になることは覚えておきましょう。
【代表者名なし】口座名義を法人名のみで開設できる銀行3選
代表者名不要で法人名だけで口座開設できる銀行のおすすめを3つ紹介します。
セブン銀行
ネットバンキング利用料(税込) | 2,200円/月 |
振込手数料(税込) | 同行宛て:55円 他行宛て:165円 |
普通預金金利(年率) | 0.02% |
ビジネスデビットカード | ◯(最大1.0%還元) |
専用アプリ | ◯ |
セブン銀行は全国のセブンイレブンのATMを利用できるネット銀行で、口座名義を法人名義のみとしているのが特徴。
法人口座開設には「売上金入金サービス」の利用が必要のため、現金取引が多い小売業の法人に特におすすめです。
売上金入金には入金専用カードを使えるので、紛失・盗難や従業員による不正利用などの心配がないのも安心できます。
ネット銀行ということもあり、振込手数料も店舗型の銀行より安く設定されているのも嬉しいポイントです。
ちばぎん(千葉銀行)
ネットバンキング利用料(税込) | 2,200円/月 |
振込手数料(税込) | 同行同一支店宛て:無料 同行本支店宛て:110円〜 他行宛て:165円〜 |
普通預金金利(年率) | 0.001% |
ビジネスデビットカード | ◯(0.5%還元) |
専用アプリ | ◯ |
ちばぎん(千葉銀行)は地方銀行の中でも屈指の資金力を誇っており、信頼感が強いのが特徴です。
法人口座の名義は2023年7月以降から法人名のみ表示に変更されたため、通帳やキャッシュカードに役職・代表者名が載ることはありません。
法人口座を発行すると最大25枚までビジネスデビットカードを作れるので、従業員にもデビットカードを持たせたい法人に向いています。
創業期の資金調達や成長期の経営安定化など、企業のライフステージごとに手厚くサポートをしてくれるのも魅力です。
中国銀行
ネットバンキング利用料(税込) | 3,850円/月 ※データ転送サービスなしなら1,650円/月 |
振込手数料(税込) | 同行同一支店宛て:無料 同行本支店宛て:110円〜 他行宛て:385円〜 |
普通預金金利(年率) | 0.001% |
ビジネスデビットカード | ◯ |
専用アプリ | × ※専用アプリはあるが法人口座は利用不可 |
中国銀行は、法人口座の名義を役職名・代表者名ともに非表示で開設できる銀行です。
法人口座を開設すると、会計サービス「Mikatano資金管理」との連携や法人クレジットカードの発行により経理業務の効率化を図れます。
ローンサービスも多数用意されているので、ニーズに合わせて資金調達できる点も便利です。
代表者名なしの銀行口座を利用する際の注意点
代表者名なしで法人口座を開設できるといっても、全く名前を知られずに法人口座を利用できるわけではありません。
以下3つのケースでは代表者名が必要になるので注意しましょう。
取引先へ振込名義を案内する際は「法人名+代表者名」が必要
会社経営をしていれば、取引先から自社の法人口座に振り込みをお願いするケースも出てきます。
その際、振込名義を伝えるときには「法人名+代表者名」が必要です。
例えば、メガバンクの三菱UFJ銀行では振込名義について以下の通り案内されており、法人口座では「会社名+役職名(肩書)+代表者名」を正確に伝えなければならないとのこと。
他の金融機関についても同様で、代表者名を伏せて振込口座を案内するのは困難です。
ただし、取引先に代表者名を知られることはビジネスにおいて一般的なことです。
むしろ、代表者名すら明かせないようでは取引先から怪しまれてしまいます。
健全に会社経営しているのであれば、代表者名を知られることを気にする必要はないでしょう。
払戻請求書、口座振替依頼書には役職名・代表者名を記入する必要あり
代表者名なしの法人口座であっても、払戻請求書・口座振替依頼書などの提出書類には役職名と代表者名の記入が必要です。
具体例として、通帳・証書で役職名・代表者名を非表示にできる中国銀行でも公式サイトに以下の記載があります。
払戻請求や口座振替を利用しないなら関係ないことですが、会社経営をしていく中でどちらのサービスも利用しないのは非常に不便です。
なお、これらの書類は銀行内での確認に使われるだけで、役職名・代表者名を記入したからといって悪用されることはないので記入を躊躇する必要はありません。
通帳やキャッシュカードに代表者の名前がないだけで代表者の登録は必要
そもそも、法人口座を開設する際には代表者の本人確認書類が必要です。
銀行側からすると、法人に関する書類のみだけでは代表者の素性がわからないため口座開設を許可できません。
例えば、代表者に以下の問題があれば口座開設させるのはリスクでしかないでしょう。
名義を法人だけにすると通帳やキャッシュカードには役職名・代表者名が表示されませんが、代表者名の情報を一切明かさずに口座開設できるわけではないのです。
個人事業主用の銀行口座であっても屋号のみは不可能
法人ではなく個人事業主の人でも、事業用の銀行口座開設には本人の名前が必須です。
個人事業主の場合は屋号をつけた口座を開設できますが、名義は「屋号+氏名」となり、屋号のみでの開設は不可能です。
口座名義 | 可・不可 |
---|---|
氏名のみ(山田太郎) | ◯ |
屋号+氏名(シャチョサン 山田太郎) | ◯ |
屋号のみ(シャチョサン) | × |
なお、個人事業主にとっての屋号付き口座は、法人における法人口座のようなものです。
口座開設すると以下のメリットがあるので、支障がなければ開設することをおすすめします。
ちなみに、屋号付き口座は全ての金融機関で取り扱っているわけではないため、口座開設したい金融機関で開設できるかは事前にチェックしておきましょう。
法人口座の口座名義に関するよくある質問
法人口座の名義変更について、よくある質問を3つ紹介します。
Q.口座名義に代表者名は必要?
法人口座の名義には代表者名が必要かは銀行により異なります。
ただし、代表者名なしの場合も代表者の本人確認がないと口座開設できないため、完全に代表者の素性を隠すことはできません。
Q.ゆうちょ銀行の法人口座は代表者名なしで開設できる?
ゆうちょ銀行では、法人口座を代表者名なしで開設することはできません。
Q.代表者が変わったら法人口座の代表者名は変更したほうが良い?
代表者が変わった場合は法人口座の名義変更をする必要があるので、変更後は速やかに手続きを行ってください。
まとめ
今回は、法人口座を代表者名なしで開設できるかについて解説してきました。
改めてまとめると、以下の通りです。
法人口座の名義を代表者名なしにすることはできますが、取引先や銀行に知られずに口座を利用することはできないので気をつけましょう。
代表者名なしにこだわるなら、記事内で紹介した3つの銀行のいずれかでの口座開設をおすすめします。