個人事業主や会社経営者の方々で、法人カードを発行すべきかで悩んでいる人もいるでしょう。
法人カードは会計処理を楽にできるというメリットがある反面、運用ルールを間違えればかえって非効率になってしまいます。
また、個人事業主の場合には、個人カードとの違いを見出せない人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、法人カードの必要性やデメリット、個人カードとの違いなどを詳しく解説していきます。
この記事でわかること
- 法人カードの必要性
- 法人カードのデメリット
- 法人カードと個人カードの違い
- 法人カードの個人利用について
- 法人カードのおすすめ3選
法人カードはいらない?本当に必要かどうか解説
法人カードは果たして本当に必要なのでしょうか。
個人事業主、スタートアップ企業、中小企業の規模の違いごとに必要性を解説していきます。
「個人事業主」法人カードが必要な理由
法人カードは法人化していない個人事業主も発行することができ、発行すると以下のメリットがあります。
個人事業主が法人カードを持つメリットは以下の通りです。
- 事業用とプライベート用の支出を区別できる
- ビジネスに便利な付帯サービス・優待を受けられる
- 経費の会計処理が楽になる
特に大きなメリットが、事業用とプライベート用の支出を区別できる点でしょう。
個人事業主の場合は事業とプライベートの支出が混同しがちなので、法人カードを作って明確に区別すれば事業の支出が一目でわかるようになります。
事業のお金の流れが可視化できるだけでなく、確定申告の際の経費計算も楽になるので、余計な手間を削減することができるでしょう。
「スタートアップ企業」法人カードが必要な理由
スタートアップ企業は少人数で創業するケースも多く、個人用のカードを使っていてもそこまで不便を感じないかもしれません。
しかし、いずれは法人カードを作ろうと考えているのであれば、早い段階で作った方が良いでしょう。
▼スタートアップ企業が法人カードを持つメリット
- 従業員に運用ルールを浸透させやすい
- 設立直後の大きな支出にも耐えられる
少人数の間に法人カードに切り替えれば、運用ルールも浸透させやすいので混乱を招きにくいはずです。
また、会社の設立直後はオフィスの賃貸料や各種手数料、備品購入費など多くの経費が発生します。
一般的に利用限度額が大きいとされる法人カードの方が、様々なシーンで使いやすいでしょう。
なお、スタートアップ企業には設立直後でも発行しやすい法人カードがおすすめです。
発行しやすい法人カードは年会費無料のものも多く、余計な経費をかけなくてよいのも魅力です。
「中小企業」法人カードが必要な理由
従業員が経費を一旦立て替えて、後から精算する仕組みを採用している中小企業も多いでしょう。
この仕組みでは従業員が増えるにつれて経費精算を行うケースも増加するため、経費管理に多くの労力を要することになります。
しかし、法人カードを導入して従業員にも追加カードを発行すると、以下のメリットを得られるはずです。
▼中小企業が法人カードを持つメリット
- 従業員の立替払いがなくなる
- 経費管理に関する手間を減らせる
- 経費処理のミスを少なくできる
従業員の立替払いがなくなるので、一時的とはいえ身銭を切りたくない従業員も安心できます。
さらに、法人カードを会計ソフトと連動させれば会計担当者の経費に関する業務を減らせるうえ、経費処理のミスも少なくできるでしょう。
なお、中小企業におすすめの法人カードは、利用限度額が大きいカードです。
複数の従業員が法人カードを持つと経費も大きくなることが予想されるので、必要な経費を補えるだけの限度額のカードを選ぶことが重要といえるでしょう。
また起業したばかりの個人事業主や中小企業向けのおすすめ法人カード11選が気になる方はこちらからご確認ください。
法人カードを持つデメリット(いらない理由)
法人カードを持つことは、メリットだけでなく以下3つのデメリットもあります。
- 年会費が必要なカードが多い
- 必要な限度額を確保できないことがある
- 運用ルールが必要
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
年会費が必要なカードが多い
個人カードでは年会費無料のカードが多数あるため、お金をかけずにカードを維持することは難しくありません。
一方、法人カードは年会費有料のカードが多いので、とにかく支出を抑えたい企業・個人事業主からすると好ましくはないでしょう。
中には年会費無料の法人カードもありますが、個人カードに比べると数が限られてしまいます。
年会費無料にこだわる場合、カードの選択肢という点では個人カードに劣ることは覚えておきましょう。
なお、法人カードの年会費は全額経費に計上できるので、個人カードの年会費有料カードと比べるとコスパは良いと言えます。
必要な限度額を確保できないことがある
設立直後あるいは経営状況が良くない企業の場合、貸し倒れるリスクを懸念されて利用限度額を低めに設定されるケースがあります。
限度額が低ければ、会社経営に必要な支出を法人カードだけでやり繰りできないこともあるでしょう。
そうなると、不足分を補うために個人カードや現金などを使用したり、別の法人カードを新たに発行したりする必要があります。
業務を円滑にするために法人カードを導入したつもりが、かえって会計処理が複雑になってしまう可能性もあるのです。
一般的には年会費の安いカードほど限度額が低めに設定されがちなので、限度額が気になる場合は年会費が高い法人カードを選ぶのも1つの手段といえます。
運用ルールが必要
法人カードを導入して従業員にも追加カードを持たせるときは、事前に運用ルールを設定しておいた方が安全です。
ルールを明確にしてないとスムーズに運用できないので、法人カードを発行するメリットが薄れてしまいます。
どこまで明確にするかは企業により異なりますが、少なくとも以下の4つはルールを設けておくと良いでしょう。
【運用ルールの具体例】
- 追加カードを持てる社員を決める
- カード利用の報告を義務付ける
- カードの利用範囲を決める
- カード利用分の領収書を提出する
これらのルールを定めておけば円滑に運用できるうえ、法人カードの不正利用防止にも役立つはずです。
従業員同士の使い回しはNG
法人カードは設定された従業員しか使うことができないので、たとえ従業員同士であっても使いまわすことはNGです。
運用ルール以前にカードの利用規約に反するため、使い回しは決して行わないよう徹底してください。
普段は一括保管しておき、利用時のみ貸与するなどのルールを設けることで使い回しを防ぎやすくなるでしょう。
法人カードと個人カードの違い
法人カードと個人カードはともにクレジットカードという共通点こそありますが、発行・利用の目的が異なるためカードの特性にも違いがあります。
ここでは、法人カードと個人カードの主な違いを3つ解説していきます。
- 審査内容がまったく違う
- 限度額は法人カードのほうが高額設定
- 会計ソフトとの連携で会計処理の円滑化
審査内容がまったく違う
法人カードと個人カードでは、発行時の審査内容が以下のように異なります。
審査で重視される項目 | 申し込みに必要な書類 | |
法人カード |
|
|
個人カード |
|
|
法人カードは法人に向けて発行するカードなので、経営者の信用情報に加えて経営実績や財務状況などもチェックされます。
これまでに経営者自身が良好な信用情報を積み上げてきても、経営状況が悪ければ審査に通過しないこともあり得ます。
さらに、登記簿謄本など法人としての証明書や引き落とし用の法人口座が申し込み時に必要になることが多いです。
個人事業主が法人カードに申し込む場合は、個人カードと同様の必要書類で問題ありません。
とはいえ「GMOあおぞらネット銀行ビジネスデビット」のように、審査不要で作れる法人カードもあるので、審査が甘いものを取得するのも実はあり。
限度額は法人カードのほうが高額設定
カードの利用限度額は、法人カードの方が高く設定されていることがほとんどです。
以下は、三井住友カードにおける法人カードと個人カードでの利用限度額です。
法人カード(三井住友カード ビジネスオーナーズ) | 500万円 |
---|---|
個人カード(三井住友カード) | 100万円 |
※各個人の限度額は審査により決定
カードランクはともに一般ランクで、付帯保険などの特典にも大きな違いはありません。
しかし、限度額は法人カードの三井住友カード ビジネスオーナーズが500万円で、個人カードの5倍になっています。
法人カードは事業での支出に使うことが基本なので、プライベート用の個人カードと比べて限度額が高いカードが多いのが特徴です。
会計ソフトとの連携で会計処理の円滑化
法人カードは会計ソフトと連携することで、カードの利用明細を自動で会計ソフトに反映できます。
仕訳も自動で行ってくれる会計ソフトも増えており、連携すれば会計処理がより円滑になるでしょう。
【法人カードと会計ソフトを連携するメリット】
- 会計処理の時間を大幅に短縮できる
- 会計知識がなくても会計業務が簡単に行える
- 手入力による入力ミスを防げる
個人カードの場合でも会計ソフトと連携できますが、連携してしまうとプライベート利用の決済も会計ソフトに反映されてしまいます。
結局は手入力でプライベート利用か事業利用かの処理をしなくてはならないため、法人カードと比べると会計処理は煩雑になるはずです。
法人カードの個人利用は可能!しかしやめた方がいい
法人カードは契約形態が法人向けというだけで決済機能は個人向けカードと変わらないため、法人カードを個人利用することは可能です。
しかし、法人カードは法人または個人事業主が事業のための支払いを目的に発行しているカードなので、個人利用をすると以下2つのデメリットが発生します。
【法人カードを個人利用するデメリット】
- 会計処理が複雑になり、会計業務の効率化が達成できない
- 個人利用を会社の経費に間違える可能性があり、脱税のリスクが上がる
特別な事情でもない限り、法人カードの個人利用はやめておきましょう。
ポイント・マイルの個人利用はNG
法人カードで得られるポイントを個人利用することはNGです。
法人カードは個人カードと同様にポイントプログラムがあるので、利用額に応じて一定割合のポイントがもらえます。
例えば、三井住友カード ビジネスオーナーズなら200円ごとの利用で1ポイントが貯まり、「1ポイント=1円」相当でポイントを使えるので現金決済よりもお得です。
ところが、法人カードで得られるポイントの所有権は法人(企業)であり、従業員個人に付与されたものではありません。
個人でポイントを使用すると横領扱いになり、最悪の場合は「業務上横領罪」に問われる可能性があります。
法人カードは決済額も多いのでポイントも貯まりやすいですが、個人的なポイント利用は絶対にやめてください。
ちなみに、個人事業主の場合は法人化していないので、ポイントを個人利用しても問題ありません。
ただし、法人カード利用で得られるポイントは税法上の収入になるので、会計処理には注意しましょう。
おすすめの法人カード3選
現在では、多数の法人カードが発行されているので、どのカードを選べば良いのか迷ってしまう人も多いでしょう。
ここでは、年会費無料で発行できる法人カードのおすすめを3枚紹介します。
UPSIDER(アップサイダー)
年会費(税込) | 無料 |
---|---|
利用限度額 | 10億円 |
ポイント還元率 | 1.0〜1.5% |
付帯保険 | ー |
追加カード | リアルカード、バーチャルカード(ともに発行枚数無制限) |
国際ブランド | VISA |
主な特典 | Boost Your Business(50企業以上での優待) |
申込対象者 | 法人代表者 |
参照:UPSIDER
UPSIDER(アップサイダー)は、35,000社超の企業が導入している年会費・発行手数料無料の法人カードです。
利用限度額は最大10億円と超高額かつ発行枚数が無制限なので、従業員数の多い企業でも安心して導入できます。
- 年会費・発行手数料無料
- 発行枚数無制限で利用限度額は最大10億円
- 会計ソフトに決済データを自動反映
- 不正利用時の補償は最高2,000万円
- 35,000社超の企業が導入
各種会計ソフトに決済データを自動反映してくれる機能もあり、会計処理が楽になるでしょう。
さらにポイント還元率は1.0〜1.5%と法人カードの中では高いため、経費削減にも役立ちます。
バーチャルカードなら最短即日で発行できるため、すぐにカードが欲しい企業にもおすすめです。
▼UPSIDERの口コミ・評判
\決算書なしで申請できる/
UPSIDER法人カード
公式サイトに行く
三井住友カード ビジネスオーナーズ
年会費(税込) | 無料 |
---|---|
利用限度額 | 500万円 |
ポイント還元率 | 0.5% |
付帯保険 | 海外旅行傷害保険(最大2,000万円) ※他の保険に切り替え可能 |
追加カード | パートナーカード(最大18枚)、ETCカード |
国際ブランド | VISA、Mastercard |
主な特典 | ビジネスサポートサービス、福利厚生代行サービス |
申込対象者 | 満18歳以上(高校生は除く)の会社経営者(中小企業代表者もしくは個人事業主) |
参照:三井住友カード
三井住友カード ビジネスオーナーズは、中小企業代表者・個人事業主向けの年会費永年無料の法人カードです。
年間100万円以上利用すれば、年会費永年無料のままゴールドカードにアップグレード。事業用のゴールドカードを無料で発行できるのは大きなメリットといえます。
- 年会費永年無料の法人カード
- 年間100万円以上利用でゴールドカードに無料アップグレード
- 三井住友カードの個人カードと2枚持ちで還元率1.5%
- ビジネスサポート・福利厚生代行サービスが付帯
- ETCカードも無料で発行可能
カードの通常還元率は0.5%ですが、三井住友カードの個人カードと2枚持ちで1.5%の超高還元率が実現するので、ポイントも効率良く貯められるでしょう。
さらにETCカードも無料で発行できるので、車を使う企業にもおすすめです。
\メインカードにおすすめ!/
ビジネスオーナーズ
公式サイトに行く
GMOあおぞらネット銀行 ビジネスデビットカード
年会費(税込) | 無料 |
---|---|
利用限度額 | GMOあおぞらネット銀行の口座残高 (1日あたりの限度額は最大1,000万円/枚) |
ポイント還元率 | 1.0% ※税金・公共料金など一部の決済は0.5% |
付帯保険 | ー |
追加カード | デビット付きキャッシュカード(最大20枚)、サブカード(最大9,998枚) |
国際ブランド | VISA、Mastercard |
主な特典 | 会計ソフト連携 |
申込対象者 | GMOあおぞらネット銀行に口座開設した法人(法人口座)・個人事業主 |
参照:GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行ビジネスデビットカードは、GMOあおぞらネット銀行に口座を保有している法人・個人事業主が発行できる法人カードです。
デビットカードのため与信審査なしで発行できるのが大きなメリットで、年会費無料のため経費をかけたくない設立直後の企業におすすめです。
- 年会費無料のビジネスデビットカード
- 与信審査なしで発行可能
- 利用額の1.0%を現金でキャッシュバック
- 最大1,000万円まで後払いオプションも設定可能
さらに還元率は1.0%と高いうえ、現金でキャッシュバックしてくれるのも魅力的。
また、月1,000万円まで利息なしで後払いできるオプションもあるので、一時的に口座残高が少ない場合でも利用できるのも嬉しいポイントです。
\審査不要で個人事業主OK/
GMOビジネスデビット
公式サイトに行く
まとめ:法人カードはあると便利!会計処理の効率化を実現
今回は、法人カードの必要性やおすすめの法人カードについて解説してきました。
改めてまとめると、以下の通りです。
- 法人カードを作れば、会計業務を効率化できる
- 利用限度額も高めなので、高額支出がある場合にも使いやすい
- 会社で運用ルールを決めないと、法人カードのメリットを活かせない
- 法人カードは個人利用できるが、原則しない方がよい
まだ法人カードを発行していない個人事業主や法人代表者の方々は、ぜひ法人カードを発行して会計処理の効率化を図りましょう。
会計処理が効率的になれば事業に費やす時間も増えるので、売上アップや事業拡大も狙いやすくなるはずです。